制服レモネード
「いっぱい食べて体重戻せ〜、増えすぎたらまた俺がランニング付き合ってやるし。あと一日しかねーけど」
「えっ、」
龍ヶ崎くん、もしかして……。
「よかった。食欲あって」
「……もしかして、私の体型が戻るために?」
デートだとかなんとか言ってたけど、やっぱり私のためなんじゃん。
「どう?気持ち揺らいだ?俺、結構気の利く男でしょ?」
「うっ、それ自分で言っちゃうのはどうなんでしょうか……」
私がモゴモゴとそういうと、龍ヶ崎くんは「ハハッ」と笑って、再びケーキを口に運んだ。
「梓葉がいつも通りだったらそれでいい」
「……っ、」
龍ヶ崎くんと視線が絡まって、動揺して慌ててケーキの方に目線を落とす。
「弱ってる時にこういうことするの、男らしくないって思うよ。梓葉がそいつといて一番幸せな時に告白してそれで振り向いてくれるなら、俺のものだけど。そうじゃない今みたいな状況なら、意味ねーなって」
私は龍ヶ崎くんの気持ちの期待に応えられない。
でも、私がそのことで罪悪感を抱かないように、龍ヶ崎くんはまた、そんなことを言ってくれる。
「龍ヶ崎くんは変わらないね。初めて会った時からずっと、親切にしてくれる」
「そんなのお互い様だろ。梓葉だって、最初から俺と普通に話してくれた。子どもの頃から目つきが悪いって言われて友達なんてできた試しがない。だから周りに反抗する人間になってしまったって言ったらただの言い訳なんだけど。それでも、初めてだったよ、梓葉が。俺に、笑いかけてくれた人って」
龍ヶ崎くんが自分のことを話してくれることも、信頼してもらえていることも、素直に嬉しい。
「はい、とりあえずいいから、早く食べろ」
龍ヶ崎くんは私にもう1つのお皿を差し出してそう言った。