制服レモネード
「うん。ありがとう、龍ヶ崎くん」

龍ヶ崎くんの気持ちに応えることはできないけれど。わがままを言えば、これからも、大切な友達でいたい。私の大切なものを同じように大切にしようとしてくれる人。

龍ヶ崎くんには絶対、素敵な人に出会って幸せになってほしいって心から思うんだ。


* 

そしてやってきたファッションショー本番当日。

昨日のリハーサルまではなんとも思わなかったけど、会場に来てるお客さんの数を見て、さっきから心臓のばくばくが止まらない。

ランウェイを歩いている時に転んだらどうしようとか、笑顔が引きつったらどうしようとか、考えてもなかった心配事が一気に押し寄せてくる。

「アズっっ!」

控室でメイクを終えて、席で出番を待っていると、入り口の方から声がした。

目線をそちらに向けると、「よっ!」と手をあげてる濱谷くんと、今からファッションショーに出るんじゃないかと思わせるような派手な私服姿の結衣が笑顔でこちらを見ていた。

「2人ともっ!来てくれたんだねっ」

そう言って2人の元へと向かう。

「はい、これ服飾部のみんなで食べて」

そう言って濱谷くんから差し出されたのは、長細い箱でそこには見覚えのあるドーナツチェーン店のロゴが書いてあった。

「わっ!ありがとう濱谷くん。みんな喜ぶよ〜」

「あ、中身は私が選んだから」

「代金は俺が支払ったんだから俺からって事でいいだろう」

「は〜⁈あんたにセンスがないから私が選んであげたんでしょうが」

二人のいつも通りのやりとりにほっこりする。
この感じ、本当に安心する。
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