制服レモネード
それから、提案されたように客席に手を振って。

キラキラしたこんな景色を見たのは生まれて初めてで。
素直に、この空間を、楽しいって思えたときだった。

客席の後ろの方に見えた人影。
スーツ姿の背の高い男性……。

え。

あれって……。

もしかして……。

いやでもまさか……。

似てる人、だよね。

こんなところにいるはずないんだもん。

そんなことを考えながらも、今はショーに集中しなきゃと、私と龍ヶ崎くんは、二人で舞台を後にした。

「ふたりともめっちゃかっこよかったよ〜!いいスタート!この調子であと2着、頼みます!」

舞台裏に戻ると、鈴木先輩が私たちのことを待っててくれていた。

「他の学校とランダムに出番がくるから毎回空気作るのが大変なんだけど、さっきの龍ヶ崎くんの!大正解だよ!」

大興奮で褒めちぎる鈴木先輩にクールに「どうも」と答える龍ヶ崎くん。

「梓葉ちゃんもめっちゃ可愛いかった!」

そう言った先輩が突然私の耳元に顔を寄せた。

「なんか大学生の人たちがもう目つけてるらしいよ。気をつけてっ」

鈴木先輩は耳打ちでそういうと「引き続きよろしく!さ、次の衣装の準備」と声をかけて先に控え室へと向かった。

気をつけてって、元はといえば鈴木先輩がファッションショーに誘ったのに。
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