制服レモネード

「っ、だって、この間来てた方、言ってたじゃないですか。なんで私とは会ってくれないんだって。最初は、そういう都合のいい関係に了承してたって、いずれはああやって、どっちの方が好かれてるとか、時間を多く過ごしているとか、自分が1番じゃないことに不満が出てきて、全員いい気持ちしないと思います」

「……都合のいい、関係ね」

初めて、矢吹さんが家に挨拶に来た時。

部屋のドアを少しだけ開けて、玄関でママと話す矢吹さんを覗いて────。

『かっこいい人だ』

素直にそう思った。

挨拶すればきちんと返してくれて、爽やかだって評判が良くて。

そういう人に、彼女がいるって知って、ちょっとショックを受けてる自分がどこかにいて。

かと思えば、全然違う女性を連れてきて。

私の勝手な理想でしかなかったし、大人は結局こんなもんかって現実を早く見れてよかったなんて思えていた。

矢吹さんにはがっかりしていたはずなのに、荷物を持ってくれたり、何度も謝ってくれたり、そんな風に中途半端に優しくしてきたと思ったら、今度は『子供にはわからない』なんて突き放して。

「そういうのは、誰も幸せにならないと思います」

「それはどーかな。梓葉のいう、都合のいい関係ってさ、具体的にどーいうことするのかな?」

っ?!

キッチンから私の隣の椅子に軽く腰を預けた矢吹さんが、私の毛先に手を伸ばす。

「ど、どういうことって……」

手を繋いだり、キスしたり、その先のことを、特別な恋人としかしないようなことを、不特定多数の女性と平気でするってことでしょう。
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