制服レモネード
大人の世界
「梓葉ちゃんめっちゃ可愛かったね〜!リハーサルの時から素質あるなって思ってたけど、本番はやっぱり空気が違うな〜」
「将来はモデルのお仕事本格的にやってみたいなぁとかないの?」
控え室で着替えを済ませてメイクを落としてもらっていると、その場にいた先輩や同級生たちにそう聞かれる。
「あ……いや、モデルなんて考えたこともなかったです」
頭の中は客席にいた矢吹さんの姿でいっぱいの中、みんなの話に耳を傾けていると、
ブーブー
メイク道具が並ぶ横に置いてあった私のスマホが震えた。
!?
嘘……。
画面に表示された文字をみて固まってしまう。
ロック画面には【矢吹さん】と表示されている。
ずっと話したかった人からのメッセージ。
メッセージを見るために、震える指先で画面をタップする。
『今、会場の外にいるんだけど、会えないかな?』
え。
嘘。
なんで。
───ガタッ
「え、梓葉ちゃん?!」
考えるよりも先に体が動いていた。
椅子から立ち上がり、みんなの私を呼ぶ声を無視して、私は控え室を抜け出した。