制服レモネード
そんなこと、どうしてわざわざ言わせようとするんだ。
サイテーだ。
「知らないでしょ。その時の温もりとか感度とか。気持ちがなくたってテンションでどうにでもなるもんなの。互いに、今必要ってタイミングが合えばそんなもの……」
「それ、そう思ってるの矢吹さんだけかもしれないです。絶対、気持ち抑えて我慢して合わせてる人がいる!今までそういうことしてた人の中にだって、矢吹さんを本気に好きになった方だっているでしょ?」
こんな人を、一瞬でも、魅力的だと思ってしまったのが悔しい。
一瞬見せたあの優しい顔が、本性ならいいのに。
「俺のことを好きだって言い出す子とは、それから連絡を取らないよ」
「……っ、なんで。一途に大切に1人を想って、そんな相手とすることだから、素敵なものなんじゃないんですか」
「フッ。そんなの、夢物語だよ。まぁ、素敵な人と出会って素敵な恋をして、素敵な家庭を築く大人だっているだろうね。でも俺は、そっち側の人間じゃない」
矢吹さんはそう言って、毛先に触れていた手を私の頭の上に持ってきた。
どこか冷めてるのに優しくて──。
優しい人なのかもって思ったら突き放して。
矢吹さんがわからない。
こんなに美味しいレモネードが作れるのに。
私に、こんなに爽やかで美味しい飲み物があるって教えてくれた人なのに。
わからない。
全然、なにもかもわからないから。
「私、もっと、矢吹さんのこと知りたいです。どうしてそんなこと言うのか、矢吹さんのことを知って、わかりたい」
私は、彼の目をまっすぐ見てそう言った。