制服レモネード
「……」

「……」

「とりあえず座って」とママに促されて、矢吹さんのもとにコーヒーが運ばれて数十秒。

「で、その、梓葉とは、いつから」

矢吹さんの向かいに座るパパがコーヒを一口飲んで、閉じていた口を開いた。

「ちゃんとお付き合いを始めたのは、一ヶ月前ぐらいで」

「ちゃんとってどういうことかな」

「はい、お付き合いする前から、梓葉さんとは、よく話していまして」

「へえ……」

明らかに、パパの様子は普段と違う。

いつもは基本穏やかで、ママの言うことにも常に「ママがいうならいいと思う」とママの意見にさえ反論しないような人だ。

「……矢吹くんは、自分がしていることの責任とか、そう言うことをわかっているのかね」

「ちょっとパパ。ごめんなさいね、矢吹さん。この人、今日の朝、梓葉に恋人が出来たこと聞いてまだ動揺しているなかだから」

きつい言い方をするパパをママが慌ててなだめて、矢吹さんに謝る。

「いえ、岡部さんの言う通りです。でも、もちろん僕なりに考えて下した決断です。これから、梓葉にはいろんな出会いがあります。その時、彼女の心がどう変化していくかわからない。その時はまた話あって、2人で決めようと思います。しかし今は、これしか考えられない。僕は、彼女との将来を考えたうえで、早い段階で僕の誠意をご両親にも知ってもらうことが、今僕ができる、最大の責任を持った行動なんだろなと」

へ……しょ、将来?

矢吹さんのセリフには、パパやママももちろん驚いている。

けど、そんなの、私が一番……。
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