制服レモネード
「こ、こんにちは」

そう言ってペコっと挨拶する私と。

「ただいま、母さん」

いつも聞く声より、若干低く聞こえた隣の矢吹さんの声。

「授久……っ、」

矢吹さんが『母さん』と呼んだその人は、小さくそう彼の名前を呼んだ。

「どうぞ」

「あっ、ありがとうございますっ」

販売所の奥にある家の中に案内されて畳の居間に座ると、矢吹さんのお母さんが、お茶を私の前に置いた。

「……」

先程、矢吹さんのお母さんに呼ばれて私たちの正面に座っているお父さんは、私たちの顔を見てもずっと無言のまま座っている。

矢吹さんが言っていたように、少し強面の雰囲気。

「……彼女の、梓葉」

沈黙を破った矢吹さんがそう言って私を紹介した。

「あっ、はい、矢吹さんとお付き合いさせていただいています。岡部 梓葉と申します」

慌てて自己紹介をして頭を下げる。

「あら、梓葉さんっていうの。素敵なお名前ね」

───ゴホンッ

おかあさんが優しく笑いかけて名前を褒めてくれたのでお礼を言おうと声を出したら、おとうさんの咳払いにかき消されてしまった。

ううっ、やっぱり、歓迎されてない……。
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