制服レモネード

「ハァ、ハァ、ハァ、ごめんっ、結衣っ!」

マンションの階段を駆け下りて、エントランスの方で私を待っていた親友の橋本(はしもと)結衣(ゆい)に両手をパチンッと合わせてから謝る。

「おーおー。珍しいではないか。しっかり者のアズが寝坊なんて」

カールした明るい茶髪の毛先をクルクルと指に絡め、今日もバッチリ施したメイクで私を見つめる親友。

側から見れば、いわゆる“ギャル”という部類に入る風貌をしていて、第一印象では怖がられる結衣だけど、根は友達思いの優しい子。

「ほんっとごめんっ!英語の課題、苦戦した問題が何個かあって……寝たの遅くなっちゃったんだ」

結衣は「え、カダイ?マジか……」なんて一瞬、顔を青ざめさせたけど「5時間目までに出せばいいから、手伝おうか?」と私が声をかけると、たちまち顔の血色が良くなった。

「いやー、やはり持つべきものは岡部 梓葉ですなー」

嬉しそうにそう言って歩き出す結衣。

「なにそれ〜。手伝うって言っても、答えまるまる写させるとかじゃないからね?解き方を教えるだけだから」

「えっ、そ、そんな固いこと言わないでさー」

「んー?聞こえな〜い」

途端に焦り出す結衣の反応がおかしくて、少し意地悪なことを言うと、「もー!アズの鬼ぃ!」なんていう結衣の可愛い声が響いて、朝から吹き出す。
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