制服レモネード
「へ〜!ついにアズに好きな人ねぇ!人間どこでどう変わるのかわかんねーもんだなぁ〜!」

「だからまだ、好きって決まったわけじゃ」

私がそういうと「いつまで言ってんだ」と結衣が突っ込んだ。

「それで、アズはその人とどうなりたいわけ。どうしたいわけ」

「……え」

アドバイスを聞こうと思ったのに、濱谷くんの質問が不意打ちすぎて、口ごもる。

「アズの気持ちがどうなのか次第で、どう動くか決まるだろう」

「でも、子供は相手にしないって言われてるし……迷惑がられたらそれこそ……」

「そんなの、アズが高校生だってわかってるからじゃん。制服脱いだら年齢とかぶっちゃけわかんないって。アズの気持ちが明確になって、それからやるべき手順を考える」

すごい。まさか、濱谷くんがこんなに頼りになると思う日が来るなんて!

「え〜なんかはまやんがはまやんじゃないみたーい。誰〜」

机にベターと上半身を倒して結衣がそういう。
本当、正直びっくりした。

「俺、ねーちゃんいるからなー。こういう話結構聞かされてるから、客観的に話せるのかも。応援してるからな、アズ」

「そっか〜。ありがとう濱谷くんっ!」

私が今、どうしたいか。

私は……やっぱり、矢吹さんのことがもっと知りたい。そのためには、彼と過ごす時間を増やしていく。

『時間がないんじゃないの……死んでも時間を作るもんなの』

この間結衣に言われた言葉を思い出す。

「私、頑張るっ。子供だって相手にされなくても、知ろうとする努力くらいはしたい。矢吹さんと一緒にいるための口実って……」

「レモネード……」

「え?」

ボソッと呟いた結衣に聞き返す。

「レモネード、の、作り方!教えて貰えばいいんだよ!」

「なるほど……レモネードの作り方。うん!やってみる!」

今日、家に帰ったら速攻、家の食事の用意をして、さっさと食べて後片付けをすれば、パパとママが帰ってくる間に結構な時間ができる。

そのタイミングで矢吹さん家にお邪魔すれば……。
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