制服レモネード
矢吹さんの、人を傷つけたくないって気持ちをちゃんと持っているのは、愛情深い素敵な両親のおかげだと強くわかる。

「お父さんもすっごく嬉しそうで。本当、梓葉さんには何度感謝しても足りないくらいよ。授久のこと、これからよろしくお願いします」

矢吹さんのお母さんはそう言って、私に頭を下げた。



「ほんとあっという間ね。今度はもう少し長くお休みとって、うちでうんと遊んで頂戴」

「はい、お世話になりました。お土産まで……たくさん頂いちゃって」

お土産と言って渡された『矢吹養蜂場』の蜂蜜の入った紙袋を持って、玄関の前でそうお礼を言う。

「いやもういいのよ!!こんなのでよければいつでもあげるわ!!ね、お父さん」

「こんなのは余計だ。梓葉さんが味のわかる子だから送るんだよ、誰彼構わず送ったりしない。蜂蜜っていうのは……」

「あーはいはい、昨日も散々聞きました!じゃあ2人とも気をつけてね!」

おとうさんの蜂蜜論が始まろうとすると、おかあさんがバッサリ止めてそう言った。

「はい、本当にありがとうございました!」

私がそう改めてお礼を言うと「梓葉さん」とおとうさんが私のことを呼んだ。

「……私たちはいつでも君を矢吹の娘として迎える準備ができているから、そのつもりで。息子のことよろしく頼んだよ」

っ?!

「おとうさん……」

涙が溢れそうになって、グッと堪える。

昨日のお昼まで、想像もできなかったことが起こって、頭がついていかない。
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