制服レモネード
大人レモネード

「卒業おめでとう!!」

そんな声があちこちで聞こえてくる。

あれから約1年。
ついに、この日がやってきた。

シャボン玉や紙吹雪が舞う中を、今日最後の制服で歩く。

「アズ、こういう時ほんと凛としてるよなぁ。女の子ってみんな涙もろいもんなんだと思ってた」

「えっ、あ、まぁ……」

生徒や保護者で作り上げてくれている花道を歩きながら、濱谷くんに話しかけられてそう声を出す。

「なに言ってんだよはまやん!アズはさっさと卒業したくてたまらなかったんだから、寂しいとかあるわけないだろ!」

私と濱谷くんの話を後ろから聞いていた結衣がそう言って私と濱谷くんの肩を捕まえる。

「あぁ、そっか。矢吹さんも卒業式来れればよかったのになぁ」

濱谷くんが花道の人だかりを眺めながらボソッと言う。

正直、私が一番そう感じている。

でも、矢吹さんはもちろん今日も仕事だし。

矢吹さん本人は、ずっと「行きたい」って言ってくれていたからそれだけで十分嬉しいんだけど。

「でもほんと、何だかんだあっという間だったよねぇ」

結衣のそのつぶやきで、私の頭の中にも、たくさんの思い出がよぎる。

矢吹さんとお付き合いするようになって、緊張の中、ご両親に挨拶して。

3年生になってからは、矢吹さんともあちこちデートに出かけたり、夏休みには、矢吹さんの実家に2週間ほどお世話になって、おとうさんが別れ際に泣いていたっけ。

「ほんと、色々あったよなぁ〜。まさか、アズたちのBBQに俺たちも参加することになるのは思ってもなかったけど」

そうそう。

夏休みの最後に、私と矢吹さんの家族でBBQをすることになって。
< 214 / 227 >

この作品をシェア

pagetop