制服レモネード
「うるせー」
口元を手で隠しながらそう呟いた龍ヶ崎くんの声を結衣は聞き逃さなくて「先輩にうるせーとは何だ!」と騒ぐ。
龍ヶ崎くん……。
こういう時、なんて言ったら正解なのかわからない。
龍ヶ崎くんのことは、友達として大好きだけど、それ以上にはならないわけで。
「あーそんなつまんねー顔しないで」
「っ、」
龍ヶ崎くんのふと優しくなる声。
「この学校で俺が楽しくいれたのなんて、どう考えても梓葉のおかげだから。そのお礼、ってだけ。それ以上の気持ちはないから安心して」
「うんっ、私も、龍ヶ崎くんといろんな思い出ができてすごく楽しかったよ!3年生になっても頑張ってね!ありがとう」
今の私にできることは、彼との思い出を、本当に楽しかったと心から伝えて、忘れないこと。
そして、感謝の気持ちを、目一杯の笑顔に込めること。
「卒業おめでとう、梓葉」
優しく私の名前を呼ぶ彼の声が、3月の風と一緒にふわっと運ばれる。
矢吹さんといると、早く大人になりたくてどうしようもないなかったのに。
この制服を着るのが最後だと思うと、やっぱりどこか寂しくて。