制服レモネード
でも、ここでしなかったら機嫌なおしてくれないんだもんね。せっかくの大切な日、笑顔で2人で過ごしたいもん。

「わかりました、じゃあ、ほっぺで」

「えーーーーー」

不満そうな矢吹さんの声が響く。

「文句言わないでください!初めっからは無理です!こんなもんです!」

「……わかったよ」

「目つぶってください」

「え、ほっぺなのに必要?」

「必要です!恥ずかしいんで!」

私のその声に、矢吹さんが渋々目をつぶった。

一年経っても、やっぱりドキドキしちゃう。

一緒にいるだけで、すごくふわふわして、ギュって胸が何度もなって。

綺麗なフェイスラインに、スッと整った鼻筋。

目をつぶっていてもその端麗な顔はよくわかる。

日に日に、好きが溢れて。
これからももっと、矢吹さんと素敵な日々を過ごしたい。

これからもずっと……。

彼の肩に手を添えて、

『ほっぺに』なんて言ったけど。

矢吹さんばかりがうわてなのはなんだか悔しいから。

彼の唇に、ゆっくり自分の唇を重ねた。

すぐに顔を離すと、矢吹さんが、目を見開いてこちらを見ていた。

「騙した……」

「……悔しいんで」

そういうとグイッと手を引っ張られて、矢吹さんにソファに押し倒される形になってしまった。

整った顔が、私をまっすぐ見ている。
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