制服レモネード

「なにそれひどいっ!今日は矢吹くんから誘ったのにっ!」

っ?!

突然女の人の声が響いたと思ったら、カツカツと激しいヒールの音が勢いよく階段を降りる音がした。

声の感じと歩き方、あれ絶対怒っちゃったやつだよね?

気がつくと、私は玄関を出て、

「だ、大丈夫ですか?矢吹さん」

彼の家のドアに向かってそう言っていた。

──ガチャ

「子供は寝る時間だけど」

「まだ8時です」

ドアを開けて、ひょこっと隙間から顔を出した矢吹さんが、心なしか少し幼く見えた。

「何か、ありました?」

『矢吹さんのことが知りたい』
私はそう言ったから。どんな些細なことだって。

「怒らせただけ」

「あんな楽しそうに帰ってきたのに……」

「なに。盗み聞き?流石にリビングまでは聞こえないでしょ」

ニヤッと意地悪な顔を浮かべた矢吹さん、少しだけ顔が赤い気がした。

深めに空気を吸って見ると、ツンとする香り。

これ、お酒の匂い……?

「酔ってます?矢吹さん」

「いや、全然、ふふ」

いや、確実に酔ってるでしょう。

「何したんですか、矢吹さん」

「はぁ……俺のことそんなに気になんの」

ヘラヘラと笑っていたかと思えば、急に真剣な表情をしてこちらを見つめてくる。

なんか、調子狂うな……。

「気になります。この間、言ったみたいに、やっぱり知りたいですから。矢吹さんのこと」

「ふーん。あっそ。じゃあ、教えてあげるよ」

「ほ、ほんとに?!あの、実は私、レモ───」

──グイッ

っ?!
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