制服レモネード
寝室に入った瞬間、こんなにわかりやすく大人しくなられちゃ、こっちだって色々限界なわけで。

枕元にある小さなライトだけつけた薄暗い部屋は、俺と梓葉のシャンプーの匂いが広がっているだけ。

前に『矢吹さんとならいいですよ』なんて生意気なことを言っていたくせに、いざこう言う空気になると、こんなに戸惑うんだもんなぁ。

梓葉がその気じゃないなら、俺はいつだって待ってやる自信はあるし、……いや、やっぱりそれは嘘だ。いつだって我慢している。

止められなくなる前にっていつだって制御しているし、本当はいつだって今まで以上に触れたくってたまらなかったんだ。

薄暗くなった部屋のベッドにちょこんと座る梓葉の隣に腰掛けると、ビクッと梓葉の身体が反応したのがわかる。

「なに、梓葉、緊張してんの?」

あまり顔が見えないことをいいことにそんな風にからかってみる。自分だって十分ドキドキしてるくせに。

「矢吹さんはこういうの、慣れてるかもしれないですけど、私は初めてなんで。……好きな人と、その……」

「俺だってこんなに好きになったの梓葉が初めてなんだから、慣れてないよ」

「嘘!絶対慣れて──っ、ちょ、」

彼女のうるさい口を黙らせる方法はこれしかない。
俺だって、もう限界なんだから。
< 223 / 227 >

この作品をシェア

pagetop