制服レモネード
「誰かさんが変なこと言うから、気分乗らなくて怒られたって言ってんだけど」
少しご機嫌ななめな声と混ざり合う、ツンとしたお酒の香り。
「えっと、す、すみません」
「責任、とってよ」
っ?!
「ちょっ、矢吹さんっ」
胸辺りまである私の髪の毛に触れて片方耳にかけると、今度はその部分に顔を寄せて、
静かに囁く彼の声が耳にかかって、くすぐったい。
「こ、子供は相手しないんじゃないんですかっ」
「酔ってたら、男なんて相手が誰だろうとなにするかわかんない」
「……っ」
わざとらしく、耳元で囁く矢吹さん。
私に触れてくれていることよりも、今までどれだけの女性にこういうことをしてきたんだろうってことにしか頭が回らなくて嫌になる。
このまま、矢吹さんに流されるままになっちゃったら、今までの女の人たちと同じになっちゃう。
「さっき、酔ってないって」
「忠告しておいてあげるけど、酔ってるやつは自分が酔ってるとか言わないから」
「っ、じゃあ──」
「冗談」
「えっ……?」
『じゃあ、私と付き合ってください。そしたらキスでもなんでも、矢吹さんの好きなように』
そう言おうとした私の声はかき消され、矢吹さんはドアから手を離したと同時に私からも距離をとった。