制服レモネード
「大学からすぐ一人暮らし始めてからは、親とはまともに会ってないかな」

「そう、だったんですか」

サラッと、大学のことを話してくれて嬉しくなる。

大学生の矢吹さんか……どんな感じだったんだろう。高校の頃とか、今の私と同い年の時の矢吹さん、見てみたいな。

ただ、ご両親のことを聞いて少し顔を曇らせたのが気になる。

「……全然違うな」

「え?何がですか?」

ボソッと呟いた矢吹さんに聞き返す。

「いや、何でもない。ほら、瓶に入れてからのやり方も教えるからよく聞いときな」

「あっ、はいっ」

矢吹さんのレモネード教室が始まり、私は慌ててペンを持ち直してから、蓋を閉めた瓶をゆっくり回す矢吹さんを眺める。

やっぱり、レモネードのことになると、矢吹さんの顔は変わる。

優しくて、あったかい顔をするんだ。

……この顔、好きだな。

「おい、人の顔見てないでこっちみろ」

「っ、す、すみませんっ!」

パッとこちらを見た矢吹さんに注意されて、恥ずかしくて顔が火照りだすのがわかる。

見てたの、バレてた。恥ずかしい。
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