制服レモネード
「あっ、でも、蜂蜜が市販で売られているものじゃないから味変わると思うけど、それでもいい?」
「え、スーパーとかで同じの売ってないんですか?」
「あぁ、個人で作ってるところから取り寄せてるものだから」
「は、そうなんですか……」
同じ、味が作れない。
それじゃ、違うんだ。この味を飲ませたいのに。
矢吹さんに、両親の分まで作ってほしいなんて、そこまで言うのは図々しい気がするし。
「何ていうところの蜂蜜ですか?」
「……っ」
私がそう聞くと、矢吹さんはプイッと顔を背けてから少し黙り込んだ。
「矢吹さん?」
「……教えない」
「え!なんで!」
あからさまに不満そうな顔が、まるでおもちゃを取られた子供のよう。
何か気に触ることいった?
「まったく同じもん作られたら、なんかムカつく」
「えっ」
やはりわからない。この人の考えていること。
ムカつくって何よ……理由が子供すぎる。
「とにかく、諦めて」
「そしたら、みんなに飲ませられないじゃないですか!友達にも飲ませたいのに。好きなものは共有したい!」
「ダメなもんはダメ。別に俺は梓葉の友達に飲ませたいなんて思わないし」
「……っ、冷たい」
「当たり前だ。そこまでは俺にカンケーないし」
「……」
それから、矢吹さんは作り方の最終段階をパパッと教えてくれて、最後に、またレモネードを入れてくれた。