制服レモネード
まぁ、とにかく、私とは住んでいる世界が違うような大人だ。
関わることは一生ないと思うから、関係ないっちゃないんだけど。
特定の人を決めず、複数の女の人と関係を持つってどうなんだろう、とは思うわけで。
「アズ」
大人になるとそういうのが、一種のストレス発散のようなものになってしまうのかな。
「ア〜ズ?」
まぁ、初恋の1つもしたことない私にはまったくもって無縁の話────。
「岡部 梓葉!」
っ?!
「はいっ!!」
真横ではっきり名前を呼ばれてハッとする。
でも、隣を歩いていたはずの結衣の声ではない。
「ったーくー、なーにぼーっとしてんの」
そういって目の前に現れたのは、去年から同じクラスの濱谷淳くん。
「あ、おはよう。濱谷くん」
周りを見渡すと、私はもう、教室のすぐ目の前の廊下まで歩いてきていたらしい。
ぼーっとしてて全然気づかなかった。
「ほれ、結衣の顔、見てみ」
促されて、隣の顔に目を向けると、プクーっとほっぺを膨らませた結衣がこちらを睨んでいた。
「あっ、ごめん結衣っ」
「も〜!ここに来るまでに何度も話しかけてるのに、全然反応しないんだもん。寝坊でまだ寝ぼけてる?」
「え、何、アズが寝坊?」
珍しいと言いたげにこちらを見る濱谷くん。
小麦色の肌と太陽で焼けた赤みがかった髪の毛が、濱谷くんの鍛えられた身体を余計引き締まってみせる。
サッカー部のエース。
この学校では知らない人はいないんじゃないかと思うくらい、女子からも男子からも人気の存在だ。