制服レモネード
『あんなこと言ってごめんなさい』
謝れないまま、矢吹さんは出張に行ってしまった。

やっぱり、矢吹さんが言うように私はうんと子供だ。

矢吹さんがあのことをまるで気にしてないみたいに普通に話してくれたから、私もちゃんと話すことができたわけで。

ちゃんと謝らないといけなかったのに。

『は、濱谷くんは!矢吹さんみたいな人じゃない!』

なんであんなこと言っちゃったんだろう。

「ううっ〜」

「どうした岡部。体調悪いか?」

っ?!

名前を呼ばれてハッとすると、私の横に、先生が立っていた。

黒板には『テスト』と書いてある。

まずい……。

「あっ、大丈夫です。すみません」

慌てて先生にそう言って、ペンを持ち直す。

矢吹さんが出張に行って2日がたち、私は今、テストを受けている。

矢吹さんに頑張ってって言われたのに。
どうしよう。全然集中できないよ。

「ありゃ、テスト終わりにアズが突っ伏してるのレアじゃない」

「これするのいつも結衣だもんな〜。なんか唸ってたし」

「……っ」

全教科のテストが終わり、帰りのSHRが終わった後、結衣と濱谷くんが心配そうに私の席へとやってくる。

「あんまりできなかったの?」

「うん。テスト勉強してる時もずっと集中できなくて……」

「せっかく矢吹さんに教えてもらったのにな。俺は教えてもらったところバッチリできたぜ!」

そう言う濱谷くんに、結衣が慌てて「ちょ、空気読めよ。はまやん」と言う。
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