制服レモネード
危険な龍

「あ〜歌いすぎた!もうだめ!声出ない!」

「アニソンメドレー数え切れないくらい歌ってたからな。あとであの部屋入った客、履歴みてビビると思うぞ」

「ほんっと楽しかった!2人ともありがとう。色々スッキリしたよ」

時刻は夜の8時前。

私たちはカラオケ店を出る。

これでもかってくらい久しぶりに歌って、矢吹さんのことや、追試のこと、かなり楽になった。

「テスト終わりはいつもくんじゃん?アズが笑ってくれてよかったよ。私、アズの笑顔見れないと死んじゃう病だ」

そう言って、結衣がギューと私に抱きついてくる。

「ハハッ、大げさだよ〜」

3人でたわいもない話をしながら、家路に向かい、
楽しい時間は本当にあっという間で。

「じゃあ、また明日な」

「またね」

と、濱谷くんと結衣と別れてから、家へと向かう。

今、うちに向かってるところだって、ママに連絡しておこう。もう、パパやママは家に帰ってる頃だろう。

門限の9時まで時間はあるから、ママになにか買い物がないか聞いとこうかな。

そんなことを思いながら、スクールバッグのチャック付きのポケットを開けて、スマホを取り出そうとする。

ん?

ポケットに入れたんだっけかな……。

いつも入れてるはずのところにスマホが見当たらなくて慌ててスカートのポケットに手を入れる。

あれ。

ここにもない。

嫌な予感を感じつつ、ブレザーのポケット、バックの中、あらゆるところを探す。

嘘でしょ。

「……どこにもない」

もしかして──。
< 44 / 227 >

この作品をシェア

pagetop