制服レモネード

記憶をたどって、最後にスマホを見たのがいつだったのかを思い出す。

確か、カラオケで3人で写真を撮ったのは覚えている。

えっと、それから──。

いや、やっぱりその時だ。
撮って満足して、部屋のソファにそのまま置いて行っちゃったかも。

「ううー、取りに戻らなきゃー」

さっさと取りに戻って、門限までには間に合うようにしよう。ちゃんと店員さんが預かってくれてたらいいんだけど。

それだけを祈って、私は急いで、来た道を戻って再びカラオケ店へと向かう。

この時間、1人で街を歩くのなんて初めてかもしれない。いつも、結衣や濱谷くんたちと一緒にいることしかなかったから。

急いで駆けつけたカラオケ店。
自動ドア越しから、店内にある時計を見ると、8時過ぎ。

「あれ、君1人?」

「えっ」

店の中に入ろうとすると、カラオケ店の外にあるベンチでたまっていた複数の男の人たち。

その中の1人がこちらに向かって声をかけてきた。

私に、言ってるんだよね?

キョロキョロと辺りを見渡しても、私以外にお店に入ろうとすると人はいない。

「1人カラオケとか虚しーじゃん。俺らと遊ばない?」

え。

こんな風に一人でいるときに男の人に声をかけられるなんて初めてで少し怖くなる。

この人たち、なんだか柄悪そうだし。

「ごめんなさいっ、急いでて!」

私はとりあえずそれだけ言って、慌てて店内に入る。少し怖かったし、帰るときにあの人たちから見える自動ドアをまた使わないといけないのはちょっと嫌だけど。

そんなことはどうでもいいんだ!早くスマホ!
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