制服レモネード
「ねぇ、ってば」

1人が私の肩に手を置いて、わざとらしく耳元でそう囁いた瞬間──。

「クソ邪魔なんだけど」

背後から低くて威圧的な声が聞こえた。

「あ?」

「今取り込み中だから邪魔しないでくれる?」

私の背後の先に向かってそういう人たちと同時に、少し後ろに首を向けると、

パーカー姿でフードまで被った男性が1人、ズボンのポケットに手を突っ込んだまま立っていた。

「てめーらが邪魔だって言ってんだよ。道のど真ん中でわちゃわちゃしてんじゃねーぞ」

「はぁ?」

「さっさとうせろよ」

っ?!

なにこの状況?!
まるで今から喧嘩が始まりますって空気が一瞬にして出来上がる。

こんなのに巻き込まれたくないよ!

「ちょ、まって。こいつ、K高の龍ヶ崎っすよ!」

「龍ヶ崎?あの和島さんを病院送りにしたっていう?」

私の腕を掴んでいた男の人たちが口々にそう話す。

龍ヶ崎?確か……どっかで聞いたよな。

あっ!そうだ、今日職員室で先生たちに叱られていた!

「さっさと消えねーと『和島さん』みたいに全員立てねーようにするけど」

っ?!

な、なんて事?!
和島さんって、ここら辺の不良の世界では有名なお方なのかな?そんな人を病院送りにした人……。

「チッ、行こうぜ」

リーダー格の人が悔しそうにそういうと、残りの人たちはその人を追いかけるように私を掴んでいた手を解いて、夜の街に消えていった。
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