制服レモネード
「あんたは?なんでこんな時間に1人で制服のままフラフラしてんの。あの辺り、夜は増して治安悪いの知ってるだろ」

「うん。けど、あそこのカラオケ安いから。今日は特に、色々と発散させたかったの。あ、カラオケには友達と言ったから大丈夫だよ!スマホさえ忘れなければ、あの人たちに絡まれる心配もなかったんだけど……」

そう言いながら、ママに連絡しようとしていたのを思い出して、龍ヶ崎くんに断りを入れてから、慌ててスマホを開いてママに電話をかける。

「よかった!龍ヶ崎くんのおかげでママに連絡するの思い出せた〜またありがとうだ!」

電話を切ってお礼を言うと、龍ヶ崎くんは「俺は何も言ってねー」とぶっきらぼうにそう言った。

「つーか、お前さ」

「ん?」

「俺のこと、怖くねーの」

少し立ち止まってから、こちらをジッと見下ろす龍ヶ崎くん。細い眉毛と、彫りの深いくっきり二重の瞼、漆黒の瞳が私を捉えて離さない。

「最初は怖かったし、さっきの人たちと話してる時も怖かったけど、でも助けてくれて、こうしてうちまで送ってくれたりとか、質問したらちゃんと答えてくれるし、全然怖くなくなったよ!」

「全然って、それはそれでどうなの」と呟いた龍ヶ崎くんは、「男のことあんまりすぐ信用するもんじゃねーよ」と付け足して歩き出した。
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