制服レモネード
テストが終わり、週末が明けた月曜日の放課後。

「気をつけて帰れよ」という担任の先生の声と同時に急いでスクールバッグを肩にかけすぐさま教室を出ようとする。

「ん、どうしたのアズ。そんな慌てて」

ドアに向かう途中、結衣に声かけられて足を止める。

「あっ、今日、帰ってくるの!」

そう。今日は、矢吹さんが出張から帰ってくる日。
すごく長く感じた。

テストはうまくいかなくて来週には追試が控えているけれど……そんなことよりもまずしなきゃいけないことがある。

「あ、そっか!頑張って!」

結衣はそういうって私に笑いかけると、「追試の勉強も忘れるなよ」と私の背中を押した。

って──。

早歩きで帰ってきたのはいいものの、矢吹さんが何時に帰ってくるとか知らないじゃん。

連絡先だって当然知らないから聞けないし、まぁ仮に持ってたとしても、まだちゃんと矢吹さんに謝れていない状況で連絡するなんて無理である。

何時に帰ってくるのかな。

まだ自分の家にも入らないまま、好きな人の玄関の前でソワソワとする。

っていうか、もう帰って来てたり?

試しに、チャイムに手を伸ばして押してみる。

───ピーンポーン

「やっぱりまだいるわけないよね……」

どうしよう。
気付けば、1週間会えないだけでこんなに会いたいって思っちゃってるよ。

夜まで待てないなんて。

「……梓葉?」

っ?!

チャイムから手を離して俯いていると、後ろから、ずっと聞きたかった人の声がした。
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