制服レモネード
あっという間にやってきた放課後、結衣たちと別れてから図書室に向かう。

昨日、勉強するためにこれから帰りが遅くなることをママたちに話したら、自ずと追試のことも話す流れになって。

すごく心配されたけど、ママは私を責め立てたりはせずに、「頑張って」と言ってくれた。

これ以上ママたちを心配させないためにも、頑張らなくちゃね。この1週間、家事の手伝いの量も減らしてもらったし。

そして、矢吹さんが帰ってくる時間まで、一人で頑張るぞ!

図書室の奥に設置された自習机に座って、勉強道具を出す。

今日返してもらった英語以外他の教科のテスト結果は全部赤点は回避していたから、やはり、英語を重点的にやらなければ。

バタンッ

勉強して20分ほどたったとき、入り口から図書室にはあまりにも似合わない、勢いのあるドアの閉まる音がして、そこにいた全員が音のする方に目を向けた。

あれ、あれって……。

ドアを勢いよく閉めた人物と、バチッと目が合って、しまった。

そして、私を見つめたまま、どんどんこちらに向かってくる人物。

アッシュグレーのヘアカラーに、長めの前髪、そして、原型なんてまるでない着崩した制服。

この学校ではあまり見かけない『不良』と呼ばれる部類であるだろう人。

なんで、あの龍ヶ崎くんが図書室にいて、なんで今、私のところに向かって歩いてくるんだろうか。

図書室にいる全員がこちら見ているのがわかる。

「かくまえ」

「えっ、」

私の座ってる席までやってきた龍ヶ崎くんは、私の驚いた反応なんかおかまいなしいにぶっきらぼうに一言いうと、私のすぐ横に、椅子を使わずに直接床に腰を下ろした。

龍ヶ崎くん、さっき「かくまえ」って言ったけど、誰かから隠れてるってことかな?
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