制服レモネード

習えば習うほど、せっかく聞いたところを間違えちゃダメだって、焦って、余計ミスして。

それをわかって「たくさん間違った方が正解」なんて。

やっぱり矢吹さんは優しい。

「よし、じゃあ、この追試、90点以上取れたら梓葉にご褒美やるよ。何がいい?」

「えっ、ご褒美?」

「モチベーションあげられるものがあったほうがいいだろう?」

ペンを置いて、こちらに体ごと向けた矢吹さん。

私も同じように持っていたペンをテーブルに置いて、そのまま手をスカート越しの太ももに置く。

「あ、でもあんまり高いものはダメだぞ?」

考えといて、と言って再び体をテーブルの方に戻してペンを持つ矢吹さん。

ゴツゴツしていてでも綺麗な手と、袖がまくられた腕の筋肉の筋がよく見える。

大きな背中に、甘いマスク。
横から見ても、悔しいくらい完璧だ。

「……っ、───ト」

「えっ?」

矢吹さんが、ボソッと言った私の言葉を聞き返す。

「デート、したいです」

「えっ?」

戸惑った笑いに混じった矢吹さんの聞き返す声。
バカ言ってんじゃないと言われるかもしれない。

それは十分覚悟していて、それをわかってて出た言葉。

「ご褒美、くれるんですよね?90点以上取れたら。だったら私、矢吹さんとデートがしたいです!」

「……」

チラッと目だけをこちらに向けた矢吹さんは、すぐに目をそらして頬杖をついた。

まるで、私からできるだけ顔を隠すかのように。
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