制服レモネード
「梓葉も買い弁?」

やっぱり。さっきは聞き間違いかと思ってスルーしたけど、龍ヶ崎くん、私のこと呼び捨てだ。

今までちゃんと名前を呼ばれた覚えがない。しかも下の名前だ。

龍ヶ崎くんには、お前とかあんたってしか言われてなかったからびっくり。

「ううん。私じゃなくて友達の付き添い。龍ヶ崎くんは?お昼何食べるの?」

「……さぁ、あるものテキトーに食うって感じ」

「そっか。あ、でもちゃんと栄養バランス考えないとだめだよ?育ち盛りは─────」

「ちょ、ちょ、ちょっとアズ!?」

龍ヶ崎くんと話していると、突然腕をグイッと引っ張れる。

「わっ、結衣っ」

龍ヶ崎くんに背中を向ける形になって、結衣が私の耳元に口を近づける。

「は?!なんで龍ヶ崎一と喋ってんの?!パニックなんだけど!」

正直、結衣が動揺していることが意外。
結衣はこの学校では稀なギャルなわけで。

だから、龍ヶ崎くんのような人を見ても同じ種族と思って変に反応しないもんだとばかり。

「カラオケの帰り、男の人たちに絡まれたら助けてくれて……」

「まっじかよ、ほんとアズって次から次へと突拍子ないというかなんというか。でも、こいつ危ないって有名だよ?アズになんか変なことしようとして企んでるんじゃ」

そりゃ、私も第一印象はいいとは言えなかったけど。助けてもらって、話をするようになって、みんなが思うほど悪い人なんかじゃないってわかる。
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