制服レモネード
放課後、図書室のいつもの席で英語のテキストを開いてから、勉強を始める。

今日のお昼休みは、あのあと教室に帰ってからも結衣の質問攻めは止まらなくて。

しかも濱谷くんも「なになになんの話?!」と食いついてきたので一から説明するのが大変で。

やっと、ほっとゆっくりできる、静かな時間。

でも……。

「……嬉しかったなぁ」

先生にあんな風に反抗していた人が、私を見てたら追試受けたくなっただなんて。

龍ヶ崎くんのこといい人だって積極的に見てよかったって、私の考えは間違えてなかったんだって、嬉しい。

「なにが嬉しかったって?」

「え?だから龍ヶ崎くんが──」

聞き覚えのある声がして、声のした方へふと顔を上げると。

なにやら面白そうにこちらを見下ろす龍ヶ崎くんが、そのまま私の席の隣へと座ったではありませんか。

「え、ちょ、なにしてるの龍ヶ崎くん!」

「何って、勉強、するから」

「するから……?」

え、もしかしてそれって。

「ご指導よろしくお願いします、梓葉先生」

龍ヶ崎くんは、頬杖をついてこちらを見ると、なにやら勝ち誇ったような顔をしてみせた。

「え!わ、私が龍ヶ崎くんに勉強教えるってこと?」

「そうだけど」

「そうだけどって……私そんな教えるほどできないよ……」

「頑張ろうっていったの梓葉だろ」

「えっ……」

そっか、昨日、龍ヶ崎くんを図書室でかくまった時に最後に言ったセリフを、まさかそんな風に捉えられるなんて。

お昼休みの『また、放課後』って、こういう意味だったんだ。
< 70 / 227 >

この作品をシェア

pagetop