制服レモネード
「……そんな香水つけるくらいなんだから、どーせ素行悪いんでしょ」

「……っ、」

龍ヶ崎くんがクラスメイトと揉めたり、先生に強く当たったり、この地区の不良たちには恐れられてるような子だということは事実で、言い返すことができない。

「でも、ちゃんと話したらわかってくれる子です」

「要はかまってちゃんなんでしょ?梓葉優しいから、そういう人も相手にしちゃうんだ」

「龍ヶ崎くんにだって、何か事情が……!」

突然、ピタリと私の頬に矢吹さんの冷えた手のひらが添えられる。

手を伸ばしてこちらを見つめる矢吹さんの目はすごく悲しそうで。

「わかってる」

矢吹さんが静かにそう呟いて、ポツリポツリと話し出す。

「梓葉が、ちゃんと相手と向き合おうとしてくれる性格だから、俺ともこうしていてくれるのにね。また間違えた」

「えっ、」

さらに悲しそうに目線を落としてそれから再び視線が交わる。

「お節介かもしれないけど……梓葉が心配で。もし傷つけられたり危ない目にあったらどうしようって、親でも家族でもないのに口うるさくしてごめん」

親でも家族でもなんでもない……。
そりゃそうだ。

矢吹さんが私を心配する理由なんて、ガキで危なっかしそうに見えるから以外ない。

前に、私のことを『俺より大人だ』なんて言っていたけど、そんなものが私を傷つけないように優しさでそんな風に言ってくれていたのだってわかってる。

わかってるから、矢吹さんとの年齢の距離を感じるたびに、やっぱり私じゃぜんぜん追いつかないと思い知らされて苦しくなる。
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