制服レモネード
「嘘でも、矢吹さんに心配されるのはすごく、すごく嬉しいです」

それは本当だ。

でも、ひとりの女の子として心配してほしい、あわよくばそれ以上……。そんなことを考えても仕方ないことくらいわかってる。

「そういうこと、簡単に言っちゃダメだよ」

「……簡単なんかじゃない。矢吹さんだから言うんです。本当に」

こんな恥ずかしいことを言っちゃうのは、余裕がない証拠だ。会えば会うたび好きが増していて、このままいったらどうなっちゃうんだと自分でも怖くなる。

「うん、俺だって。梓葉だから心配する」

「……っ、はい」

矢吹さんは、両手で口元を覆うようにテーブルに肘をついて、私が返事をしたらコクンと頷いた。

「その追試の子、龍ヶ崎くんっていった?」

「あ、はい」

口元をさらに隠したままこちらを見ずに質問してくる矢吹さんに答える。

「……かっこいいの?」

「えっ?」

「いや、なんでもない。ホント、まじ、聞き流して今の」

慌てたように首をブンブンと振りながら、質問を撤回する矢吹さん。

「かっこいい、ですよ」

「……あ、そ、聞き流してって言ったのに」

たしかに龍ヶ崎くんの顔は整っている。
綺麗な顔で、見つめられたら正直びっくりしちゃう。だけど……。

「でも、矢吹さんの方がかっこいいですよ」

横に身体を向けまっすぐそう言うと、矢吹さんは驚いた顔をこちらに向けた。

そして、少し表情を緩めて「フッ」と笑ってから

「知ってる」

と呟いて、片方の口角を意地悪にあげた。
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