制服レモネード

「それにこれでも母親だしね。最近の梓葉見てたらわかるわよ」

ヘヘッと笑うことしかできない。
冷蔵庫から牛乳を取り出して、お皿に入れたシリアルにかける。

「あ、でもパパはショック受けるかもね。パパには内緒にしておくから大丈夫よ。同じクラスの子?」

「……っ」

『同じクラス』ってことは、同級生が相手って思われてるよね。10歳も年上の人なんてやっぱり言いづらい。

相手が、お隣の会社員の男性、なんて知ったらパパとママはどういう反応をするんだろうか。

矢吹さんが引っ越してきたばかりの時は、親切なひとが来たって喜んでいたけれど。

私が彼のことを本気で好きだと知ったら?

矢吹さんは大人で、私みたいな子供を本気で相手にしてはしてくれないかもしれないけど、

レモネードを作ってくれたり勉強を見てくれたり、プレゼントをくれたり、遊びに連れ出してくれたり。

こんなただの女子高校生に親切にしてくれる大人。

でも、ママたちからは、世間からは、どう見られちゃうんだろう。

「何時に待ち合わせなの?」

「11時」

「え?今7時よ?早く準備しすぎじゃない?」

驚いて一口含んだコーヒーを吹き出しそうになったママ。

すみません。恋愛初心者すぎて緊張でこんなに早く起きてしまいました。

「だって、緊張したんだもん」

「わからないこともないけど、女は余裕でないとダメよ?待ち合わせに遅れるくらいでいいのよ。一歩引くの」

ママと恋の話なんて初めてでドキドキ。

意外とママが自然にこういう話をしてくれるのも意外で。
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