制服レモネード
「余裕なんて無理だよ。あっちの方が圧倒的に慣れてるし」

「え、何、遊んでる子なの?」

っ?!

「あ、いや、私よりはきっと経験あるって話で……」

危ない。危うく矢吹さんの名前を出すところだったよ。このタイミングで、矢吹さんが前はよく女の人を連れ込んでいたことを思い出してちょっとモヤっとしちゃうし。

矢吹さんは、やっぱりデートとか慣れてるのかな。
いや、そりゃ慣れてるよね……。

そもそも付き合ってるわけじゃないし、ママに矢吹さんの名前をわざわざいうこともないわけで。

隠し事ができてしまったのは、ちょっぴり罪悪感だけど。

ちょっとだけできてしまったこのモヤモヤを振り払うように、私はシリアルを頬張った。

あれから、待ち合わせの時間まで、自室でスマホで何度も今日行く遊園地の公式サイトを眺めては頭の中でシミュレーションした。

まず始めに、一番人気のジェットコースターに乗って、それから3つくらいはアトラクションに乗れるとして……遅めのランチをした後に……、

だんだんと妄想に花を咲かせてしまい、たちまちニヤケが止まらなくなる。

矢吹さんと2人っきりで外に出るんだ、それだけでもありがたいのに……。勉強頑張ってよかったよ。

何度も化粧や髪型を確認して、初デートに関する記事を色々読んでいたら、時刻はあっという間に11時になる5分前。

とうとうやってきてしまったこの時が。
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