制服レモネード
あの時、勇気を出してダメ元で『デートしたい』と言った自分を心の中で褒める。
部屋を出て、リビングでゆったりテレビを見ていたママに「行ってきます」と声をかけてから、玄関に向かった。
──ピンポーン
ドキドキしながら、矢吹さんの家のチャイムを押す。
あぁ、どうしよう。ここまで来て全部夢だったら。
実はデートの約束なんてしていなかったら。
いや、昨日の夜、ちゃんとメッセージでやりとりしたんだ。大丈夫。
あんまりワクワクするような出来事があると、この幸せが夢だったらとか、幻だったらとか、変な心配をしてしまう。
今までの私だったら考えられないほど、心が常にかき乱されていて、自分じゃないみたいだ。
今更になって、「今日の格好、変じゃないかな?」なんて不安になっちゃうし。
──ガチャ
頭の中であれこれ考えていると、目の前のドアが開く。
「おはよう、行こっか」
ドアが開けられると、矢吹さんが靴を履いたタイミングで出てきた。
「お、おはようございます、はいっ」
慌てて挨拶をして、ドアに鍵をかける矢吹さんを眺める。
グレーのニットに黒のデニムパンツと、ネイビーのカラーコート。普段よりも髪の毛はゆるくセットされている。
どうしよう。
死ぬほどかっこいいじゃないですか矢吹さんっ!!
私みたいなガキンチョがどう頑張っても叶わない、無理だ!