制服レモネード
「今日、梓葉の両親、仕事休みだよね?」
「あ、はい……」
それが一体どうしたっていうんだろうか。
「ごめんね、梓葉の親にバレたくなくて慌てて駐車場に来たんだよ、隠れるみたいに」
「……どうして」
そう言いながら、今朝ママに言われたことが頭をよぎる。ママは私が今日デートする子が同級生の男の子だって確実に思い込んでいる。
矢吹さんは私の気持ちだってわかった上でデートを了承してくれるわけだし、何かあった訳ではないけれど、大人として色々考えてることがあるのかもしれない。
「普通に今日はリフレッシュするだけだけど、はたからはどう見られるかわかんないし。それに……」
それに?
だんだん小さくなっていく矢吹さんの続きのセリフに耳をすます。
「今日の梓葉、いつもと違うからすげー戸惑ったっていうのもあるかな」
「戸惑った……?」
「純粋に、女の子とデート行くんだって感覚っていうか……可愛いよ、今日の梓葉の格好」
「……っ」
さっきまで全然こっちを見てくれなかったくせに、言い終えてこちらをまっすぐと見てくるもんだから、慌てて逸らす。
今、すごく顔が火照っているのは自分でもよくわかっているから。
私が頑張って、少し背伸びをしてお洒落してここまできたこと、矢吹さんは気付いてくれて、褒めてくれた。
それだけでもう幸せだ。