制服レモネード
コンビニで飲み物を買ってから、私たちは再び車に乗り込み、目的の遊園地まで高速道路を使って向かう。
何度見ても矢吹さんの運転姿はかっこよくて、見惚れそうになるのを我慢してまっすぐと前を向く。
『♪〜♪〜♪〜』
あれ?この声どこかで……。
車のスピーカーから流れる曲に合わせて、深みのある通る声がする。
あっ、わかった。
「この曲……」
「あっ、知ってる?」
ポツリと呟いた私の声に、食い気味で矢吹さんが聞いてきた。
「えっと、曲は知らないけど、声が、最近やってるCMの歌を歌ってる人の声に似てるなぁって。いいなあってずっと思ってたんですけど、いつも調べるの忘れちゃって……」
「きっと梓葉の言ってるCMの人と同一人物だよ。スマホのCMでしょ?」
ハンドルを握ってまっすぐ先を見る矢吹さんが少し嬉しそうに声を張る。
「そう!スマホのCM!声がすっごくいいなぁって……矢吹さん、知ってるんですか?」
「知ってるも何も、大ファンだよ。学生の頃から聴いてるんだ。最近また再ブレイクしていろんなとこで曲流れてるけど、いいよね」
「そうだったんですか!はい!とってもいいです!矢吹さんが、学生の頃から……」
矢吹さんがファンだっていうアーティストを、自分もいいなって思ったこと、嬉しくてにやける顔を隠すように窓の外を見る。
学生の頃の矢吹さんか……いったいどんな学生だったんだろう。