制服レモネード
「授久……」

「バカっ、あんた部屋間違えてる。俺んち向かい」

そう言って、手の親指を後ろに向けてその先にある玄関を指す男性。

なんと、お向かいの矢吹さんではありませんか。

ブラウン系のナチュラルショートが、綺麗なお顔によく似合っている。

さっきまで騒いでいた女性は、ドロンと手を脱力させて、目の前の矢吹さんを見るなり目をウルウルとさせた。

「授久〜!ねぇ、朝の子!あれ何?最近私とは全然会ってくれなかったのに……」

「その話は後。ご近所さんに迷惑かけたんだ。あんたも謝りな。ほんと、お騒がせしてすみませんでした」

ベタベタと矢吹さんの腕を撫でる女性を気にすることなく、彼は私に頭を軽く下げた。

「あ、いえ、びっくりしましたけど……間違いだったならよかったです。はい」

彼の目をちゃんと見ないままそういうと「授久の部屋と間違えちゃった。ごめんね」と舌をペロッと出す女性。

全然反省してるようには見えないけど。

矢吹さんがすぐに駆けつけてくれてよかった。
彼はもう一度「すみませんでした」というと、女性と一緒に玄関を出た。

「はぁ〜」

なんだか一気に疲れちゃった。

玄関の段差に腰を下ろしてため息をついて、外に耳をすますと、まだ2人のやり取りがごにょごにょと聞こえる。

どうなの、ああいうのって。

今ここにいる女性と、朝、矢吹さんが一緒に朝帰りしてた女性、全くの別人だ。

やっぱり、遊んでるっていうことだよね。

1日に2人も違う女性と過ごすなんて!

見た目は、品行方正そうな仕事のできるサラリーマンって感じなのに。

女性関係がだらしないのって、大人としてどうなんだろうか。

世の中のイケメンってみんなあんな感じなの?
わからない。全然理解できないや。

「だめだだめだ!洗濯洗濯!」

腑に落ちないなんだかモヤモヤしている気持ちをなんとかしようと、勢いよく立ち上がって、

この気持ちも一緒に流して洗ってしまえと、洗濯を始めた。
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