制服レモネード

こっちの気持ちなんかお構いなしにし、目の前の彼氏さんは彼女さんに、ぐっと顔を近づけてキスをした。

っ、み、見てるこっちが死ぬほど恥ずかしいよ。

2人は、一度唇を離して顔を見合わせると、まるでスイッチが入ったかのように再びキスをした。

そして、そのまま何度も角度を変えて……。

───スッ

っ?!

「へっ」

急に、今まで見ていた景色が真っ黒になった。
一瞬、自分の今の状況の理解に苦しむ。

なにこれ……。

「子供は見ちゃだめ」

耳元で、大好きな声がそう囁く。

視界が遮断されたため、聴覚が敏感になり、声に全身の神経が集中して、身体がピクッと反応した。

そうか。私の視界を遮ってるのは矢吹さんの手。

なるほど、あのキスを見せないようにしてくれたんだ。『子供』は一言多かったと思うけど。

でも、この状況……。
冷静に考えたら異常事態である。

大好きな人に、目隠しされている。

今、私の視界を覆っている、私の顔に触れている、その手は……大好きな矢吹さんの手。

途端に心臓がバクバクとうるさくなって、身体中から汗がふき出してくる。

「はぁ、やっと終わった」

矢吹さんがそう言って私から目隠しを解いても、この心臓の音は収まることを知らない。

ふと前を見ると、列がちょうど進み出していてカップルは前へと歩いていた。
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