【Amazonベストセラー入りしました】偽花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとハラハラしていたらイケメン王が溺愛してくるんですが?
 国王が、大きなテーブルの向かい側に長い足を組んで座ってにこやかに微笑んだ。
 じっとフウルを見つめてくる顔に怒りはない。
 なんて優しい人なんだろう、自分の国を騙したわたくしに、処刑の前の最後の慈悲を示してくださっているのね——。
 他国の国王の慈悲の心に感動して、大きな青い目に涙が滲んでいく。
 ——人の優しさに触れるってこんなに嬉しいのね。
 初めての経験に心を揺さぶられながら、小声で感謝を述べた。
「陛下、ありがとうございます——」
 食事を味わおうと思って手を伸ばす。だけど、どの料理も喉を通らなかった。湯気の立つチキンからは香ばしい香りがしているし、みずみずしい葡萄や林檎もあるけど、緊張しているせいだろうか、どれも一口ほどしか食べられない。
「す、すみません⋯⋯、あまり食欲がなくて」
「食欲がない?」
 たくましい首をかたむけて少し考えた国王は、侍従長に合図をした。侍従長はミケールと同じ赤毛のベータの青年だ。整った顔立ちをしている。
「カルラと申します。王女様のお世話係のミケールの兄でございます。王女さま、もしお好きならば、熱くて甘いホットチョコレートをお持ちいたしましょうか?」
「チョコレート?」
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