【Amazonベストセラー入りしました】偽花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとハラハラしていたらイケメン王が溺愛してくるんですが?
「はい、我が国は農業が盛んではありませんが、カカオの栽培には成功しているのです」
 ミケールの兄の侍従長のカルラは、ミケールと同じように暖かい笑みを絶やさない青年だった。すぐに大きな器にたっぷり入ったチョコレートドリンクを持ってきてくれた。ミルクが入っているようだ、甘くてとてもいい香りがする。
「さあどうぞ、王女さま——」
「ありがとう⋯⋯」
 一口飲むと、固まっていた心と体がふわりと溶けていくようだった。少しずつ飲んで、最後まで飲み干したころには体がポカポカと温まっていた。
「お好きだったかな?」
 リオ・ナバ国王のガラス細工のような美しい瞳が、シャンデリアの光を受けてキラキラと光っている。
 フウルは、「はい、とても——」と頷いて、それから泣きたくなった。
 ——わたくしが本物の花嫁だったらどんなによかっただろう⋯⋯。こんなに優しい人の花嫁になれたら⋯⋯。だけどわたくしは偽者だわ。みんなを不幸にする雨降り王女なのよ。陛下の花嫁になんか絶対になれるはずがない。
 食事が終わると、
「さあ、では——」
 リオ・ナバ国王が立ち上がった。
 ——きっとこれから処刑場に連れて行かれる。
 そう覚悟した。
 だけど国王は穏やかな顔で侍従長にこう命じた。
「ミケール、王女を寝室へご案内しろ——」

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