【Amazonベストセラー入りしました】偽花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとハラハラしていたらイケメン王が溺愛してくるんですが?
低くて、とても温かみのある声だった。聞いていると、「なにも心配なことは起こらない」とすら思ってしまうほどの力強さもある。国王は顔立ちだけでなく声も素晴らしく魅力的なのだ。
「はい、陛下!」
 赤毛の従者のミケールを先頭に侍女たちがサッと部屋から出ていく。
 暖炉の火が燃える寝室に、フウルと、リオ・ナバ王だけが残された。
 雨の音と暖炉の炎がパチパチと弾ける音が響く。
「この部屋は気に入ってもらえたかな?」
「は、はい——。とっても素敵な部屋です、ありがとうございます」
 答える声がかすれて細かく震えてしまった。王の視線がずっと自分から離れないので、ドキドキも止まらないのだ。
「もっと火を強めようか?」
 リオ・ナバ王が自ら暖炉の火を調節しようとする。
「え? 大丈夫です、わたくしが自分でやります!」
 慌てて暖炉に走って、炭をかき混ぜる火かき棒に手を伸ばす。
 その手が、王の手に触れてしまった。
「失礼いたしました!」
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