【Amazonベストセラー入りしました】偽花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとハラハラしていたらイケメン王が溺愛してくるんですが?
 そんなことをお願いしていいわけがない。しかも自分はこの国を騙していた人間なのだ。
「と、⋯⋯とんでもないことでございます、陛下! わたくしは大丈夫です!」
 あまりにびっくりしすぎて、羽枕をギュッと抱きしめた。羽枕は巨大でふかふかだ。
 国王の切れ長の目はピタリとこっちを見つめて離れない。
「これでも歌は上手い。我が国に古くから伝わる子守唄を披露しましょう」
 と言いながらフウルから少し離れた位置に座った。
 ——ど、どうしよう⋯⋯。
 ますます枕をギュッと握りしめてあたふたする。
「さあ、目を閉じて——」
 うっとりするほど心地よい低い声に言われると、逆らうことはできなかった。
「はい⋯⋯」
 うなずいてパッと目を閉じた。
 子守唄は、少しだけ切ない唄だった。アルファとオメガの恋人同士が、ふたりだけで砂漠を彷徨い続ける話だ。
 リオ・ナバの低い歌声は暖かくて美しい。聴いていると胸の中の固まった不安が溶けていくような気がした。
 ——きれいなお話しだわ。
 いつのまにか自分が処刑を待つ身であることすらも忘れた。
 そして、穏やかで、深い眠りに落ちていった。

続く
< 20 / 45 >

この作品をシェア

pagetop