【Amazonベストセラー入りしました】偽花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとハラハラしていたらイケメン王が溺愛してくるんですが?
 サントスは、リオ・ナバを見るとギョッとして、目を見開いた。
「どうなさったのですか? もしかして、陛下は笑っていらっしゃるのですか?」
 リオ・ナバは部下や召使いに穏やかに接しているが、めったに笑顔を見せないことで有名なのだ。恋愛どころか、笑う暇すらなかったからだ。
「——たまには笑うさ」
 リオは咳払いをしてから、自分の前の椅子をサントスにすすめる。サントスは「なんとも珍しい⋯⋯」と呟きながら、長剣を脇に置いて座った。
「それで? 詳しいことがわかったか?」
 ナリスリア国から来たオメガ花嫁は、自分のことを『偽者の花嫁』と言った。しかも、『処刑してください』と真っ青な顔で懇願した。
 いったいどういうことなのか?
 リオ・ナバは腹心の部下のサントスは調べさせることにした。召使いたちには、「ナリスリア国の王女が『処刑』の話しをしても気にせずに、手厚くもてなせ」と命じている。
「はい、こういうときに各国に張り巡らせたスパイ網が役に立ちます。ナリスリア国は諜報活動に力を入れていないでしょう?」
「ああ、あの国は軍関係は弱いからな」
「ええ、そうです。だから簡単に情報が集まりました」
「もったいぶってないで、早く言え、サントス——」
 国王のリオと騎士団長のサントスは同年代で、気心がしれている。ふたりの会話は自然にくだけた雰囲気になった。
 その王とサントスは声の質がとてもよく似ていた。ふたりが話していると、同じ楽器で低音の心地よい音楽が奏でられているかのように聞こえる。声の双子——と従者たちがこっそり呼ぶほどなのだ。
「あのお方の名前はフウル・ルクセン、ナリスリア国の第一オメガ王女です」
「第一王女? それでは世継ぎの立場ではないか?」
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