【Amazonベストセラー入りしました】偽花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとハラハラしていたらイケメン王が溺愛してくるんですが?
 空がどんどん暗くなっていく。雨雲が集まってきて、雨の激しさも増していく。
 ——大変だわ! 陛下の服が濡れてしまう!
「陛下! わたくしのせいで濡れてしまいます!」
 慌てて手を伸ばして、王の服に落ちた雨粒を必死で払った。
「ああ、どうしよう⋯⋯。こんなに濡れて⋯⋯」
「フウル?」
「⋯⋯陛下、このままじゃお風邪をひいてしまいます!」
「フウル?」
「え?」
 ハッと気がつくと、優しい瞳が見下ろしていた。
「少し、落ち着こうか? 気遣いはもちろんとても嬉しいが——」
 リオ・ナバ王が雨に濡れた前髪を長い指でかきあげて微笑む。
「陛下⋯⋯」
 どうしてこんなに優しく見つめてくださるのだろう? もしかしたら⋯⋯、もしかしたら⋯⋯、わたくしを許してくださるおつもりなのだろうか?
 小さな希望が心に浮かんだ次の瞬間だった。
 遠くの空から「キーッ!」と耳障りな鳴き声が聞こえた。
 ハゲタカだ。
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