【Amazonベストセラー入りしました】偽花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとハラハラしていたらイケメン王が溺愛してくるんですが?
「離してください! わたくしは処刑されないといけないんです!」
「処刑などしない、するわけがないだろう!」
 力強く引き寄せられ、そのまますっぽりと広い胸の中に⋯⋯。
 王の上着をかぶったままのフウルを、リオ・ナバ王はしっかりと抱きしめた。
「へ、陛下?」
「——我が国に恵みの雨を持ってきてくれた花嫁を、処刑するわけがないだろう?」
「だけどわたくしは、塩の雨を降らせてしまいます⋯⋯」
「塩など混じっていないぞ?」
 リオ・ナバが手で雨を受ける。
 たしかに今降っている雨に塩は混じっていなかった。
「⋯⋯でも、ナリスリア国では、わたくしが降らせる雨には塩が混じっていたんです」
「変な話だな——。そなたの国のオメガが持つ特殊な能力について調べたことがあるが、太陽や風、それに雨を導く力はあっても、自然に反した能力を持つという情報は一つもなかった」
「だけど、ほんとうなんです」
 広い胸に顔を押し付けて、フウルは小声で呟いた。
「塩が混じる雨か——。奇妙すぎる。調べてみるから、俺に任せて欲しい。きっと何かカラクリがあるはずだ」
「カラクリ?」
「ああ、そうだ。誰かがあなたを陥れるために『塩の雨』という噂を流したとは思わないか?」
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