Sweet Lovers
ショルダーバッグを受け取りながら、後で、優弥の指紋登録もしなくちゃね、と言った。

「一緒に住むんだし、当然でしょ?」

「そういうの、さらっと言うなよな。

可愛すぎていろいろ保たないわ」

そう言った優弥の横顔は、真っ赤だった。

電車を何回か乗り換え、改札を降りる。

道を何度か曲がり、優弥が私を連れて行きたかったカフェに着いた。

素朴な下町、という印象しかないが、最近オシャレなお店が増えているらしい。

優梨(ゆり)から聞いたんだけどな、このお店。

女のほうが、アンテナ常に張ってるからか、よく美味い店見つけてくるんだよな。
助かった」

優梨(ゆり)、というのは優弥の妹の名前である。

彼女が私や優弥と同じ高校を目指して受験をし、晴れて合格した。

オーダーしたカヌレとティラミスのセット、カヌレに合う紅茶を堪能しながら、久しぶりの会話に花を咲かせた。

「優弥に言われるまで、すっかり忘れてたけど。

もうすぐ3月で、卒業式が目の前で。

卒業旅行の計画も金沢に決まりそうだし、楽しみ。

バイト代、使いすぎないようにしないと……

辞めたバイト先の給料、もうすぐ入ってくるからね。

ちゃんと旅行代にあてないと」
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