【書籍化&コミカライズ決定】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~
ゼフの目が「そう思っているのは自分だけ」と言っているような気がした………………
農家の娘の姿をすると、市場での周りの目線が全然違ったものに変わる。明らかに場違いな人を見る目…………今の私は確かにそうでしょうけど、流石に傷つくわね。
さっさと市場を離れ、農民たちが暮らす地域には沢山の畑が広がっており、生き生きと働いている姿が見える。しかしどんどん市場から離れるにつれて、農民の中にも農奴と言われる農家をするしか生活の道がない者たちの居住区に移り変わり、彼らは土地を借りて農作業をしなければならないので税を納めるのに必死で、生活の余裕はない。
私はそんな農奴に扮しているから、ここを通っても違和感はないのでしょうけど…………いつもの服装でここを通ったら危険でしょうね。ロバートが心配するのがよく分かったわ。
そこを抜け、さらに領地の外れの外れ……貧民街に近づくにつれて足取りが重くなる。空気は淀んできているし、周りにいる人々の生気がどんどん失われていっているのが手に取るように分かる。
そしてついに辿り着いた貧民街は……………………この世とは思えない現実を目の当たりにし、立ち尽くしてしまう。
建物ですらないような物がいくつも並びんでいる。ただの箱みたいだけど、そこで生活している人がいるようね……地面に寝転がっている者や倒れている者、数人で固まって細々と何かをしている者や気力のない子供の集団、ボロボロの衣服を引きずって歩く老人など…………私が想像していた世界よりも更に酷い光景が、目の前に広がっている衝撃に立っているのがやっとだった。