【書籍化&コミカライズ決定】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~

 ゼフは静かに頷き、私たちは貧民街を歩き始めた。そこかしこに人が倒れている…………病気なのか飢えなのか、喧嘩や殺し合いなのか……ここの空気が尋常じゃないくらい淀んでいるのだけは分かる。
 こんな中で生活していたら、そりゃ伝染病が発症するのも分かるわ……不衛生過ぎる。皆、衣服はボロボロ。領地には温泉が湧き出ているんだし、そこは身分関係なしに使えるはずでは?どうしてこんなに不衛生な人々が溢れているの…………そしてこの人たちを教会側が拒否する事があってはならない。

 教会は保護区として公爵家が支援しているわけだし、今までもそうしていたから、ここの人々も前は少しはマシな生活だったはずよ。
 
 どこかに話が出来そうな人物を探そう…………ずっとこんな状態なのか聞かなきゃ。すると何かが私のスカートの裾を引っ張る力に足を取られ、転びそうになる。

 
 「きゃっ…………」

 「……っオリビア様!」

 
 ゼフが咄嗟に私の腰に腕を入れ、上体を支えてくれたので何とか転倒は免れた。危なかった…………

 
 「何者!」

 ゼフが私の前に入り込んでくれたが、スカートの裾を引っ張ったのは私の足元に倒れている老人だった。

 
 「……お嬢さん………………何か…………食べる物……を………………めぐんで……おく……れ…………」
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