【書籍化&コミカライズ決定】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~
どうか、どうか……と何度も乞われ、私はどうするべきか考える。今この瞬間恵んであげても救いにはならないだろう。けれども与えなければこの老人は、すぐにでも息絶えてしまいそうだわ…………
「……ゼフ」
どうするべきか悩んでゼフの方を見ると、私の腕を引き「行きましょう」と歩き始めた。その老人と離され、私が歩き始めた瞬間、周りにいた物乞いたちがゆっくりと近づいてくる。
「お嬢さん…………何か……持ってないかい……」
「食べ物を…………」
「…………頼む……」
「……喉が…………渇いた………………」
あちこちから、物乞いが手を伸ばしながら歩いてくる。私とゼフは先に進めなくなり、後ずさりし始めた。
「これはまずい状況ね…………一旦引いた方がいいかしら……」
「………………オリビア様。私から離れないでください」